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JRCA登録審査員座談会

― 第2回登録審査員座談会 ―
「審査登録機関での審査員活動を知る」
(その2)
2025年7月9日

   

2.審査登録機関での審査員の活動
第2回座談会 その2
2.1 審査員の採用、力量
福丸様
 それでは、まず伊藤さんから審査登録機関の活動についてご紹介ください。
伊藤様
 日本能率協会審査登録センターでは、「公正・中立かつ厳正な審査登録活動をする」ということを品質方針とし、「よい経営に役立つ審査」を念頭において活動しています。「よい経営」とは、持続する経営だと考えており、これを支援するのが審査登録機関の役割であると考えています。
 また、審査員には、やはり工業系や理系の方が多く、品質保証、品質管理を経験された方、製造業の方が多い印象です。ただ、文系出身の方でも、営業出身の方などは、どんな会社の審査でもお客様に満足をいただいていることが多いので、理系、文系問わず、審査員に向いている方はいるように思います。
福丸様
 審査員の研修や力量の確保はどのようにしていますか。
伊藤様
 まず事前に面接を行います。採用された後は、審査のルールなどの研修を1日かけて行います。その後、4回のOJTを行い、最終的な契約となります。契約後、2日間の研修を行い、審査員としての活動を開始します。さらに、審査員から主任審査員にステップアップする際には、リーダー研修を2日間行い、その後、3回のリーダーウィットネスを経て、リーダーとなります。
福丸様
 次に佐藤さんのご所属する審査登録機関について教えてください。
佐藤様
 日本規格協会は、規格開発、標準化、品質管理を推進している法人ですので、私どもの審査でも、標準化、品質管理の考えを取り入れ、法人の定款にもある「社会経済の健全な発展や国民生活の向上に資する」ことを目指し、「信頼性の高い審査」を念頭に置いて活動しています。
 具体的には、規格要求事項の正しい理解、事実に基づく的確な判断、客観的な情報収集、組織との合意形成のためのコミュニケーション力といったことを基本にして、審査を行っています。
 審査員の研修は、契約後、最初に3日間の座学研修を行います。その後、1回のオブザーバーと4回のOJTを行います。OJTといっても、メンバーとして活動することを前提に準備をして審査に臨んでいただきます。OJTが終わると、メンバー審査員としての活動を開始し、キャリアを積んだ後、リーダー候補者研修を3日間行います。この研修に合格すると、3回のリーダーOJTを経て、リーダーとしての活動となります。
 期間としては、メンバーになるまでに約1年程度、リーダーになるまでに約3年程度となります。その他に、連絡会という形の研修を年2回、技術を磨いていくための専門研修をマネジメントシステム別に年に数回行っています。


2.2 審査登録機関の審査員で重要なポイント
福丸様
 審査登録機関での審査員にとって重要なポイントは何でしょうか。
佐藤様
 知識・経験というのは、既に企業などでの業務経験で積んでおられると思いますので、それを審査の場で発揮し、受審組織の運営レベルの向上や改善の機会につなげることだと考えています。審査で出した指摘や改善の機会が、受審組織でのマネジメントシステムのレベルアップにつながると考えています。
 知識については、審査先の事業者の製品、サービス、業務プロセス、関連する法令、用語などを知っているととても便利です。また、認定機関が認証機関を認定する際の基準の中にもあるのですが、「望ましい個人の行動」、例えば、「倫理的である」、「心が広い」、「協力的である」、「観察力がある」などの、「人間力」と表現するような資質が重要だと考えています。
 それともう1つ、大事な点は「好奇心」です。審査というのは、初めての場所、初めての事業者、初めて一緒に行く指導者の方、など、初めてのことばかりです。そのような状況で、「これは面白いな」、「こんなことやっているのか」、「こんな人いるのか」、「こんな考え方もあるのか」という感じで、初めてのことを前向きに捉えられる人が審査員としては長く続けられるのではないかと考えています。


2.3 セカンドビジネスとしての審査員
福丸様
 ありがとうございます。さて、先ほどのアンケートでもありましたが、企業で働いている方々の中には、セカンドビジネスとして審査登録機関での審査員を目指す方もおられると思います。審査登録機関での審査員の業務はどのような感じでしょうか。
伊藤様
 私共の機関でも、企業にお勤めの審査員の方がおります。私どもとしては、基本的には月に数回程度の審査に参加してほしいと考えています。所属会社に支援していただいて、その会社の業務として審査を行う場合は別ですが、有給休暇などを使って、月に1~2回程度、審査に参加するという方だと、審査員となるまでに時間がかかってしまうというのが悩みどころです。
 とはいえ、私どもも長い目で見ておりますので、できるだけ早い段階で応募していただき、自分の力量を上げる、経験の幅を広げるという意味でも、審査員にチャレンジしてほしいと考えています。
佐藤様
 伊藤さんからキャリアの話がありましたが、審査員の活動形態としては3タイプあると思っています。第一は、定年を迎えられた後に審査員を行う方、第二は、既に個人事業主として経営コンサルタントなどとして活動されている方が、二足目、三足目の草鞋として審査員も行う方、第三は、企業に所属しながら審査員を行う方、という感じです。これまでは、第一や第二の方が多かったのですが、最近は、所属企業での副業の条件緩和などもあって、第三のタイプの方が増えてきているという印象があります。


3.JRCA審査員資格取得による変化
福丸様
 ありがとうございました。それでは、大日向さん、平野さんから、マネジメントシステムへの関わり、JRCA審査員資格を取得されたことによる変化などについてご紹介をお願いします。
大日向様
 私は今、品質・安全マネジメント室という、品質マネジメントシステム、労働安全衛生マネジメントシステムを統括している部署に所属しています。この部署で行う内部監査に対応するための力量を付けることを目的に審査員資格を取得しました。
 当社は、森林事業、製造事業、流通事業、建設事業、サービス事業と多岐にわたる事業展開をしているので、グループ会社への内部監査といっても、自分のキャリアだけでは難しい部分もあり、監査員としての力量をつけるにも非常に時間がかかると感じています。現在は労働安全衛生を中心に、月に2回程度の内部監査を行っています。
 将来は主任審査員までキャリアを積み上げていきたいと思っていますが、仕事との両立は難しいと感じています。先程もお話がありましたが、企業に勤めながら審査員として活躍されている方がおられるということですので、どのように両立しているかということを伺いたいと思っております。
福丸様
 大日向さんはJRCAに登録する前と後とを比較して、何か変わったことはありますか。
大日向様
 審査員資格を取得する前は、チェックリストを上から下まで総なめして聞くような監査を行っていましたが、資格取得後は、その会社の運用に合わせた監査ができるようになってきました。その会社で一番問題となっている点や困っている点をピックアップして、その深掘りを行い、トップマネジメントに対してアドバイスをすることで、監査を受けてよかったというようなイメージを持ってもらえるようになりました。自分たちでは気づけなかった点を、監査を通じて気づいてもらっていると思います。
平野様
 私は、ISO関連業務に10年ほど携わってきましたが、審査員資格は昨年の転職後に取得しました。NECグループでは、社内の内部監査や、NECグループ会社間の相互内部監査を行う上で必要な力量の一つとして、JRCA審査員資格取得が含まれています。現在、私はNECファシリティーズの本社部門で社内の環境マネジメントシステムの活動状況の取りまとめを行っており今後は、NECグループ間での相互内部監査にも参加していく予定です。
 これまでの経験では、事業所単位での内部監査を行っていましたが、今回、審査員資格の取得により事業部の枠を超えて管理を行うための視点が身に付いたように思います。また、これまでの内部監査では、先輩方の進め方や審査登録機関の審査員の進め方を見て学んでいましたが、審査員研修のカリキュラムのひとつ『ISO17021』の要求事項を通して、本来の監査のあり方について学ぶことが出来、大変勉強になりました。