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JRCA登録審査員座談会

― 第2回登録審査員座談会 ―
「審査登録機関での審査員活動を知る」
(その4)
2025年7月9日

 

4.4 実際の審査員業務について
大日向様
 ちょっと突っ込んだ話ですが、審査員の方は大体年間でどの程度の審査を担当しているのでしょうか。また、それに対する報酬はどの程度なのでしょうか。
佐藤様
 審査員には、私のように常勤で審査登録機関に勤務しながら審査を行っている方もいますが、多くは個人事業主の方になります。そのため、担当する審査の件数はそれぞれの審査員の都合によって異なりますが、月1~2回を希望される方が多いです。場合によってはそれ以上の件数の審査をお願いすることもありますが、それでも週に1件、月に4件が限界だと思います。
 また、報酬については、採用面接の際に、審査の収入だけで生計を立てるのは難しい、ということはお話しています。お勤めの方であれば、それを本業として続けつつ、その上で審査も並行して実施し、退職された時点で審査に軸足を移すことをお話しています。
伊藤様
 佐藤さんがおっしゃったことと大体一緒ですが、年間で50~60日程度の審査をされている方が一般的です。年間に100日の審査となると大変だと思います。報酬については、例えば品質マネジメントシステムだけの審査を年間50~60日程度行った場合、企業の退職後の仕事としてはよいのかもしれないですが、生業とするにはちょっと難しいかもしれません。ただ、1種類のマネジメントシステムの審査ではなく、複数のマネジメントシステムでの複合審査、例えば4種類のマネジメントシステム審査員資格を持つ方はめったにいないので、そうなってくると審査登録機関側からも貴重な人材だと考えられます。
福丸様
 私の審査経験で言うと、審査件数が増えると日本全国を飛び歩くことにもなりますので、チームメンバーとしては週1回程度、チームリーダーとなると週1回は厳しく、10日に1回程度が限界だと思います。
 また、審査を行うためには準備をする必要がありますが、準備にもかなりの工数が必要です。準備段階では資料を確認し、チェックリストを作成します。また、審査では現地に行き、報告書をまとめたりします。企業での勤務を続けながら審査活動を行う場合は、本業の業務の状況を勘案しながら、1年間でどれぐらい審査に対応できるかを計算しておいたほうがよいと思います。また、専門性との兼ね合いもあるため、審査登録機関では、3~4ヶ月先の審査日程を検討しているので、それだけの余裕を持って審査活動を行うというのが重要だと思います。


4.5 審査登録機関の選択について
平野様
 審査登録機関はいろいろありますが、将来的に審査員として活動する場合、どのように審査登録機関を選ぶのがよいのでしょうか。
伊藤様
 まずはホームページなどで定款や審査員の募集情報などを確認し、自分に合う審査登録機関があったら連絡してみるのがよいと思います。審査登録機関の評判はなかなかつかみづらいと思いますので、連絡した際の印象(歓迎されているのか、など)も大事だと思います。また、知り合いのコンサルタントさんがいれば、その方に聞いてみるのもよいと思います。
佐藤様
 審査登録機関にもタイプがあると思っています。日本能率協会さんは、ISO審査制度ができる前からさまざまな事業を行っており、その延長でISO審査ビジネスに参入したと理解しています。日本規格協会も同様に、標準化や品質管理に関連した事業を行っている延長で、約30年前にISO審査ビジネスを開始しました。このような、元々の事業の延長で審査を行う審査登録機関もあれば、それとは異なり、各業界の専門性が強い審査登録機関もあります。そのような審査登録機関には当然、専門性が高い審査員が多くいますので、自身の専門性を活かすということを考えると、業界の専門性が強い審査登録機関を選ぶとよいと思います。
 その他に、審査員資格保有の有無、保有している審査員資格の数、業務経験、年齢など、様々な条件での募集があると思いますが、どの審査登録機関でも審査員の人数が足りない状況だと思いますので、審査登録機関に一度問い合わせしてみると良いと思います。


4.6 JRCAでの審査員資格について
大日向様
 審査に来る審査員の方からは、国内で審査を行うならJRCA審査員資格を取っておいたほうがよい、と聞きますが、いかがでしょうか。
伊藤様
 私どもではJRCAの審査員資格を必須としており、JRCAでの登録を、私どもでの審査員の力量の評価の一つとして取り入れています。ルール上、審査登録機関が審査員を評価することとなっていますが、私どもはJRCAを活用させていただき、審査員の力量の評価をしています。JRCAは認定を受けた審査員評価機関ですので、私どもとしてもJRCAでの審査員登録制度を活用してきたいと考えています。
佐藤様
 伊藤さんと同じになってしまいますが、JRCAは日本適合性認定協会(JAB)から認定を受けていて、私どもも同じくJABに認定されていますので、やはりJABから認定を受けている要員認証機関に登録されていることを条件にして新しい審査員の方を採用しています。


5.まとめ
福丸様
 ありがとうございました。最後に、座談会を通じて感じたことをお話ししていただければと思います。
大日向様
 審査員としてのセカンドキャリアの話や、企業を勤めながらどのようにして力量を向上させていくかなどが理解できました。今後の内部監査の際にも、自分のキャリアを踏まえての対応の方法が分かりましたし、審査員の稼働状況の話も、セカンドキャリアで審査員として活動する際の参考になりました。
平野様
 普段なかなか聞けないことを聞けて、とても有意義な時間でした。将来的に審査員としての活動をどこまで拡げていくかはまだ明確に決めておりませんが、今日の話を参考に今後、前向きに考えていきたいと思います。
佐藤様
 先ほど、審査員という仕事はセカンドキャリアとしてとても魅力的な仕事であると申しました。人生100年時代と言われていますが、80歳まで働けるというのはとても魅力のある職業だと思っています。本日、ご質問をいただいた内容なども踏まえ、新しい審査員希望の方とコミュニケーションを取っていきたいと思います。
伊藤様
 審査員という職業は、「お客様に満足していただくためにどのように活動するか」ということが重要ですので、お客様とコミュニケートし、お客様の取り組みに興味を持ち、探求した上でお客様に報告する必要があります。そのため、審査員の仕事は、さまざまな情報を収集し、事前の準備もすることが求められる、かなりハードな仕事です。
 先ほど福丸さんもおっしゃっていたように、審査の件数が多くなると大変ではありますが、やりがいがあるからこそ審査員の皆様は続けられるのだと思います。大変な仕事ではありますが、企業に勤めながら副業として審査員活動をすると、本業の方にもフィードバック出来ると思いますので、ぜひチャレンジしていただければと思います。
福丸様
 審査員という仕事のメリットは、さまざまな会社を見ることができることです。さまざまな業種・業態を見ることによって自分の知見が高まりますし、会社での業務にも活かすことができます。第二者監査でも同業他社を見る機会はありますが、全く違う分野の会社を見る機会は少ないと思いますし、他社のマネジメントシステムまで見る機会は、審査員でないとなかなか得られないと思います。多くの審査経験を積むことで審査員としてのステータスも上がり、見る視点も広くなります。見る視点が広くなってくると、それをまた仕事に活かせるという特徴があるのです。
 また、できれば、早い段階で審査登録機関に登録した方が良いと思います。「鉄は熱いうちに打て」ではありませんが、自分のキャリアプランを作って活動すると良いと思います。
伊藤様
 「社長と話ができる」という職業はなかなかないと思います。私は、前職では社長に会ったことはありませんでしたが、審査では、審査先の組織の社長の方に会うこともできます。審査に行けば必ずトップに会える、という仕事は、そうはないと思いますので、そういう意味では非常に貴重な仕事だと思います。
佐藤様
 私が最初に審査に参加したのが28歳の時でした。その時は当然、見習いですので、リーダーに帯同して経営者面談を行いました。経営者は私に対して喋っていただいているわけではないのですが、「審査員はすごい経験が出来る」と感じた思い出があります。その点は、外からはあまり見えない部分ですが、審査員という職業の素晴らしい点だと思います。
福丸様
 それでは時間になりましたのでこれで座談会を終了します。皆さん本日は、どうもありがとうございました。
左から
伊藤様、大日向様、福丸様、平野様、佐藤様

2025年4月3日 収録